第五十五章 「曇りなき心」
「ついに発動したか。
おまえは信じると言った。
だが、それでは駄目なのだ。
・・・いや、最初から決めていたこと。」
―
あぁそうさ、だからせめて、俺があいつを、俺の、
「やっぱり、何にも覚えてないの?」
会場から駅までの道のりを2人と2体は歩く。
「いいや、今回は ぼんやりとだけ覚えてる。
なんか、不思議な気分だったよ・・・。」
先程のロボトルを思い出しながら
シフォンは優奈の質問に答えた。
「確かに、何だったんだろね、あれ。
そういえば、さっきから黙り込んでどうしたの?」
優奈は先ほどから
一言も喋らない通を不思議に思い尋ねた。
「ん、いや、なんでもねぇ。」
そう言いつつも通の表情は少し曇っていた。
それを悟られぬようにするかのように通は続ける。
「あっそうだ、
さっき手に入れたメダロット見してくれよ。」
その言葉で今度は優奈の顔が曇る。
「ねぇ、通、このパトリオットってメダロット、
ホントに僕が貰っちゃっていいのかな?
それに値札付いてたんだけど
このメダロット、結構な値段だよ・・・?」
そう言いながら取りだしたメダロットには
確かに値札が付いていた。
本当に負ける気が最初からあの男にはなかったのだろう。
それでも約束通りパーツ一式を置いて行ったのは
せめてものプライドか、通はぼんやりそう思い、
「いいんだよ、それがロボトルってやつさ。」
やはり、どこか曇ったままの笑みを浮かべ言った。
「こんな高価なパーツを賭けるって、
なんかロボトルってすごいね。」
だが、勝利の喜びに浸る優奈達には
その変化にすら気付けなかった。
「じゃあ、また明日。」
駅のホームで別れを告げる優奈。
振り返り歩き出そうとしたとき、
優奈は通に呼び止められた。
「なに?」
振り返る優奈。
だが、通はいつになく真剣な顔だった。
「悪いけど、シフォンは先に行っててくれないか?」
そう言われたシフォンは戸惑いつつも先に歩き出す。
「なぁ、ユウ、おまえ、
今日のシフォンのあの力、どう思う?」
突然の質問に優奈は驚きつつも答える。
「通も、似てるって思ったんだ、
あの白い騎士とどことな雰囲気が・・・。
僕もそうだ、シフォンが初めて起動した日も、
似たようなことが起きたよね。
でもね、うまくは言えない、怖いのも確かだ。
けど、あの力には何か物凄く
魅かれるものがあるんだ。それに、」
やや間を置いてから、優奈は通の眼を真っ直ぐと見て、
「信じてるから、シフォンを。
だから、あの力が何だろうと大丈夫な気がするんだ。」
笑顔を浮かべながらそう言った。
「わかった、ユウがいいなら俺はもう何もいわねぇ。
すまなかったな、変なこと言って。
明日から文化祭の準備にかかる、
大変だから覚悟しとけよ。」
曇りの無い笑顔を浮かべて通は言った。
再び別れを告げシフォンに追いつこうと
走り出そうとした瞬間、
またしても優奈は通に呼び止められる。
「あ、それと、シフォンのスミロドナット、
新品未開封ならあのパトリオットの10倍の価値はあるぞ。
今のシフォンの状態でも、ざっと3倍だ。」
「えっ・・・。」
そう言って走り去って行く通。
優奈はその場に立ちつくし、
「3、3倍って・・・藤堂さん、
そんな高価なメダロット、僕なんかに・・・。」
ポツリと呟いた。
顔はみるみる青ざめていく。