第十六章 「デモンズ・シュミレーター」
大泥棒・新之助を追い詰めたカスミとナルミ。
そんな新之助にナルミはロボトルを挑むが、
何とナルミはロボトルド素人であった。
目を賭けたロボトル、
果たして勝てるのだろうか・・・・?
「っぐ!!イカれたバカめっ!!
そんな脅しに、俺が乗るとでも・・・!」
「・・・ただ勝って満足するのは、ガキだけ・・・。
大人はもっと・・・勝ちの甘美を高めるべき・・・。
ビビることはない・・・・負ければ、肉体を削るだけ」
「こ、こいつっ・・・・・!!
カブトベニアルっ!!モデルガンのガトリングだっ!」
まったくの素人のナルミ。
それを見て慌てるカスミ。
だが、ナルミは変わらない。
眉一つ動かさず、冷たい視線で戦況を観察する。
[ ブラウンバイソン。右腕ダメージ20 ]
「・・・・何だ、これ・・・・・・。
オレが、ヤラれたのか・・・」
「そうだよっ!!
頭部を破壊されたら、お終いなのっ!」
「・・・・」
「それに相手のメダロット、かなり速いっ!!
重量級のブラウンバイソンとは正反対・・・!
これじゃぁ、拳銃と水鉄砲だよぉ!」
「・・・・・・
こいつの頭・・・武器か?」
「?う、うん。
確か、レーザーだったと思うけど」
「・・・へぇ。
悪くない・・・・こいつで攻めるぜ」
「なっ!!何考えてんの、ナル兄ぃ!!
レーザーは命中率最低!それに加えて
相手のメダロット速さ +
ナル兄初心者なんだよ!?」
暴挙。もう初心者というレベルではない。
酷い言い方をすれば、初心者以下の適当の部類。
その光景をあざ笑うように見る新之助。
「ククッ・・・クククッ!!
(こいつ、ド素人!!
目を賭けると言い出した時は、
どんな俊才かと思ったが、あぁ〜?
カスッ!!ゴミ以下ッ!
揺ぎ無き、自滅野郎っ・・・・!!)」
「ッチ、速ぇな・・・・。
ブラウンバイソン・・・右に4歩移動・・・」
[ ブラウンバイソン。
左腕ダメージポイント20。
脚部ダメージポイント30 ]
「ダ、ダメぇ!もう見てらんないよぉ!!
(勝負以前の問題っ!あんなノロい動きで
カブトベニアマルを追ってても・・・!
勝てるワケない。勝てるワケないよ・・・!!)」
[ ブラウンバイソン。
右腕ダメージ20。機能停止。
頭部ダメージポイント、15 ]
空を舞う零戦を、地上の牛が追い掛けると同じ。
褒める点が一つも無い。まさに最悪の戦い方。
だが、異端。この男、異端。
眉一つ動かさず、場を見つめる。
そんな時、ふとカスミがひらめく。
「(で、でも、もしかしたら、これは罠かもっ!!
相手を追跡する指示は、自分を素人と見せる演技で、
本当はその油断を狙って・・・・!!)」
「・・・ブラウンバイソン、左に3歩移動・・・・」
「(そうだ、そうなんだよっ!!
その証拠に、まだ左腕パーツはやられてない!
そうじゃなくても、周りの
障害物を利用したりとか・・・!)」
[ ブラウンバイソン。
左腕ダメージ20。機能停止。
脚部ダメージポイント、5 ]
「えぇえーー!!?
(ひ、左腕パーツが、やられちゃった!?
それによく見たら、利用できそうな障害物も全然ない!)」
やはり、この男に勝つ気は無いのだろうか。
勝ち目の無い、いやこの状況で
まだ「勝利」を考えることすら恥な場面。
ナルミは、無謀にも指示を止めない。
「・・・ッチ・・・。
ブラウンバイソン・・・後退だ。
後ろに、2歩」
「・・・も、もうダメだよ、ナル兄ぃ。
逃げても・・・無駄だよ・・・」
「フフ・・・ハハッハッハッ!!
無様、哀れだなナルミぃ!
なんだその姿は!?
大言ぬかした男が、今は逃げ腰かっ!」
「・・・・・ククッ・・・」
「な、何が・・・何がおかしい、ナルミぃいい!!!
あまりの絶望に、トチ狂ったのかっ!?」
「・・・当たりだぜ、クズ・・・。
狂えるほど、たまらない・・・
恐怖すら、心地良いそよ風・・・。
それも、人一人を喰えるとなれば
・・・・絶頂・・・・!」
「っ!!・・・こ、殺す・・・・・殺すっ!!!
カブトベニアル!トドメだ、やれぇえーーーーーー!!」
「あ、あぁああ!!ま、負けちゃう・・・・・!!」
・・・・・・・・・
ついに、決着の時。
奇跡起こることない戦い。
小学生でも、勝敗の優劣が分かるほど。
新之助が叫び、カスミが嘆く。
そんな時、この男、卑劣。
この場面で、笑みをこぼす。
例えるならば、狂気。
「ど、どうした、
カブトベニアル・・・なぜ攻撃しない!?」
「っ!?(え、えぇ・・・・?
カブトベニアルの動きが、止まったっ・・・!!)」
「・・・生きたいんだろ?
避けてみな・・・・ブラウンバイソン。
頭部のレーザー」
ドカァアアアアアアン!!
[ カブトベニアル。
頭部ダメージ30。機能停止します ]
ナルミを除く二人が、
虚を突かれたように口を開けて棒立ちする。
カブトベニマルが突然、止まった。
まるでそう、ナルミが呼び寄せた悪魔が、
カブトベニアマルにとりついたかのように・・・。
「な、ナル、兄が・・・勝った?
ど、どういうこと!?
何で、カブトベニマルは攻撃をっ!」
「ククッ・・・単純さ・・・・。
メダロットのルールって奴にこういう項目があるハズ。
・・・・・人間を、攻撃するなってな・・・・・」
「う、うん。メダロット3原則で、確か・・・。
あ・・・あぁああ!!!」
「そう、簡単なこと・・・・。
ブラウンバイソンを、あいつに重なるように
移動させてたのさ・・・」
「そ、そうか、
マスターに攻撃が当たると危険視した
カブトベニマルは、攻撃ができなかった・・・!!
いや、しちゃいけなかった!!
メダロット3原則がある限り!」
「オレの・・・勝ちだ・・・」
「(う、嘘ぉ?これが、普通の人の発想!?
法律を、ルールを利用して勝っちゃった・・・!?
初心者・・・初心者だけど、
間違いなく、天才っ・・・!)」
常人とはまったく別の発想。
彼が利用したのは「メダロット3原則」。
目に見えるものではなく、
目にみえない根本的なものを武器として使ったのだ。
「ククッ・・・それより・・・・・。
おい、クズ・・・・賭けの代償・・・・・」
「う、うぅう・・・!
バカな!!あんなロボトル認めてたまるか!
私を利用するなんて、そんな卑怯な・・・!」
「?・・・意見が合うな・・・・。
俺も丁度そう思ってた・・・
これじゃ、足りない・・・。
・・・今度は、鼻だ・・・鼻を賭けようぜ」
「!!?」
「さぁ、ちゃっちゃと済まそうぜ・・・。
お前が満足するまで、
何処までも・・・何処までも・・・」
「(こ、こいつ・・・本気だっ!!
本当に、本当に俺を殺しにきてるっ!!
ば、化け物・・・・化け物だ!!)」
ファンファンファン!!
冷酷な顔で、ゆっくり歩み寄っていくナルミ。
その姿に、恐怖する大泥棒・新之助。
だが、救いが現れる。
「大泥棒・新之助ぇ!!
窃盗容疑の罪で現行犯逮捕するっ!」
「あ、あぁ・・・!!
お、おまわりさん!!助けて下さい!
もう、もう泥棒なんてしませんから!」
ザワザワッ・・・
「?・・・・何だ、コイツら・・・・」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・
よーやく、アタイの呼んだ警察が来たみたいだね。
これで一安心だよ、ナル兄!!」
「ククッ・・・・運の良い奴だ・・・。
・・・帰るぜ・・・・・」
「あ、ちょ、ちょっとぉ!!」
最後の最後まで、悪魔をまとうナルミ。
しかし、これにて一件落着したのだ。
「大泥棒・新之助、ついに逮捕!」
翌日の新聞に、でかでかと掲載されるのである。
次の日・・・
「え、えぇええーーー!!
ナル兄、何処かの国のスパイぃい!?」
「恐らく、な・・・
記憶が、じょじょに戻ってきた。
それより・・・・記憶が戻るまで、オレ・・・
ここで、花屋を続ける・・・・
だから、手伝え、カスミ」
「(ど、どっかの国のスパイが、花屋を運営していて良いの?)
あっ。それより、ナル兄のブラウンバイソンは?」
「・・・・?・・・・
そういや、いなくなっちまったな」
「?・・・ナ、ナル兄!!
もしかして、脚部パーツが半壊したままの
ブラウンバイソン、置いてきちゃったの!?」
「・・・・知らねぇな・・・・」
「こ、このダメスパイーーー!!!
早くブラウンバイソンを迎えにいくよ!
ほら、ほらっ!!」
こうして、どっかの国のスパイと判明したナルミ。
彼については後ほどまた分かるであろう。
今の所は、この町の花屋として
平凡な日常を送る・・・・と思う。