第二十二章 「全員集合!カスミを救え」
ミコとのタッグロボトルで、何とかその場を
切り抜けることに成功するカスミ。
これにより、ミコとの仲が
ほんの数ミリ縮んだのであった。恐らく。
「遅い・・・!すまない、接待人!
質問があるのだが、ハチマキを巻いた女は来なかったか?」
「えぇ?ハ、ハチマキの、女の子・・・。
それって、カスミさんのことですか?」
ここは「ピース喫茶」。
小学生が唯一入れる飲食店として、それなりに繁盛していた。
鈴姉からコーヒーを受け取っているのは山田
紅蓮。
どうやら、カスミを待っているようだ。
「おぉ!!アイツと知り合いなのか、ならば話は早い。
特訓してて顔が傷だらけになってしまってな」
「と、特訓?あっ、お顔に
いっぱいシップが貼ってありますね」
「あぁ。そこでカスミにバンソコーという物を
もらう約束をしたのだが・・・
おしいのかな、バンソコー!」
「た、食べ物じゃ無いと思いますが・・・」
ガタンッ!!
「ちょっと!!ワタシのコーヒーはまだなの!?
もう1時間・・・だったか2分だっけか
覚えてないけど、遅い!!」
見ると、紅蓮の顔にはシップが
めちゃくちゃに貼られていた。
困惑する店員に、
突然、怒鳴りつける客の声がする。
「す、すみません!今すぐ、持ってまいります!」
「なんだ?カスミ並みにやかましい女だな。
あ、あぁああーーー!!宇宙人さん!!」
「?、うるさいわね、誰よアン・・・あぁーーー!!
ワタシのファン一号!!」
紅蓮と鈴姉の会話を阻んだのは、夢野ミコであった。
シップで顔が分からなかった紅蓮の存在に気づき、
ミコは威勢よく話し始める。
「っていうより!ファン一号、覚えておきなさい。
アタシは宇宙人なんかじゃないの!」
「え?・・・エイリアン?」
「こ、このバカぁーーーーー!!
女の子に何てこと言うのよ!」
コトッ
「お、お待たせしました。コーヒーです」
「あらっ、ようやく来たのね。
まったく、メニューがコーヒーひとつのみなんて。
せめて野菜ジュースくらい追加しなさいよね」
「す、すみません!何だか今日、不幸が続いてて。
怖い人から、しょ、小学生さんに助けてもらったり・・・」
「ア、アタシに会ったのが不幸だって言いたの!?」
プルルルルッ、プルルルルッ
「?、で、電話・・・珍しいですね。
誰からでしょうか」
紅蓮にとっては まだミコが宇宙人。
ミコにとっては まだ紅蓮がファン。
そんな勘違いの中、珍しく「ピース喫茶」の電話が鳴り響く。
不思議そうに受話器をとる鈴姉だが。
「もしもし・・・どなたですか?」
「す、鈴姉ぇ!!ア、アタイ、カスミだよ!」
「あっ!カ、カスミさん!!どうしたんですか?」
「一度しか言えないから、よく聞いて!!
今から1時間以内に、ハッピーランドの電力室に
現金1000万円を持ってきて!!」
「え、えぇ!?どうしたんですか、カスミさん!!
何が・・・・・」
「お、おねがい、鈴姉!!そうじゃないと、
アタイの命が・・・・ブチっ!!」
プーッ、プッー・・・・・・・
それは、日暮れに起きた事件であった。
受話器を持ったまま、動かなくなる鈴姉。
これが、今から彼らに起こる、
悪夢とも思える事件の始まりであった。
その尋常ではない様子に気づく紅蓮とミコ。
「?、どうした、店員。急に声を荒げて・・・。
まさか!来るべき山田家を狙う刺客の襲来か!!」
「んなハズないでしょ!それより、どうしたの店員さん?
どうも・・・楽しい会話には見えませんでしたけど?」
「・・・カ・・・・カスミ、さんが・・・・・・
誘拐、されました・・・!!」
「!!!??」
そう、これは
まぎれもない「誘拐事件」だった。
仲居カスミが、誘拐された。
紅蓮とミコは、眼を大きく開けて、
そこに固まるしかなかった。
震える手で、受話器を戻し、
詳しいことを説明する鈴姉。
「つ、つまり、1時間以内に身代金を持って
指定された場所に行かなければ・・・
カスミが絶命する、ということか?」
「は、はい。わ、私、どうすればっ!!
カスミさんが・・・カスミさんが、死んでしまう!!」
「っく!!同じ人間として、ゆるすまじき悪党共めっ!!
俺がカスミを取り戻してくる!!」
「ちょっと待ちなさい!!」
「何だっ!!
これは地球人の問題だ、
宇宙人は黙っていてもらう!!」
「・・・行っても無駄。アナタも犬死するだけだわ。
フンッ、それだったら放っておくのが一番、無難だわ」
「な、何ぃ!!聞き捨てならんな・・・。
貴様、カスミの命・・・
人間一人の命を何だと思っている!!」
「だから!!アナタだけじゃ無謀って言っているのよ!
ワタシが行かなければ・・・ハチマキ女は救えないわ!!」
「っ!!・・・う、宇宙人・・・」
カスミが誘拐され、そして命が危険にさらされてると知り、
熱くなる紅蓮。それを静かに落ち着かせるミコ。
ミコは三人の中でもっとも冷静であった。
「良い?相手は一時間以内に身代金の1000万を要求してる。
警察に頼んでも1000万なんて大金、1時間では無理だわ」
「な、ならば どうすれば良いんだっ!!
だいたい1000万って、えーっと・・・。
くそ!!100円玉が何枚必要なんだ!」
「アンタは ちょっと黙ってなさいっ!!
確か、そのハッピーランド・・・
開発中の段階で中止になったハズよね?」
「え、えぇ!?
はいっ、確かぁ・・・恐らく・・・たぶん」
「つまり、そこは未完成の砦。
奴らが拠点にするには あまりにも無防備。
そこを突くしかない!!」
「で、でもぉ、私達もそのハッピーランドの構図は
まったく分からないんじゃぁ・・・・」
「違うわ!!そこで働いていた建設業の人に、
犯人にバレずに電力室に行く経路を導いてもらうの!!」
非難を浴びて落ち込んでいる紅蓮をよそに、
一見、正論にも聞こえるミコの言動。
しかし、それには「理」が無かった。
焦る紅蓮と鈴姉をよそに、何とか冷静を保つミコ。
「でもぉ!
た、たった一時間の間に、ハッピーランドの
従業員さんを探しだすなんて・・・・。
あっ・・・そういえば、
私、知ってます、従業員さんの行方」
「え、えぇ!?店員、アンタ知ってるの!?
だったら最初から言いなさいよ!
どこにいるの!?その建設業者は!!」
「確かぁ、学校の校長をしている、とかぁ」