第二話 「ゼノを取り戻せ!」
屋上へと上っていくエレベーターの中で
二人は到着を今か今かと楽しみにしていた。
「早く着かないかなぁ・・・」
「しょうがないよ、このビル、
40階建ての高層ビルなんだから」
このビル「デルタ本部」は、
40階建てという高さのビルだった。
「しっかしよぉ・・何だっけ?
『今こそ力を解き放て!』
とか言っちゃってよぉww
厨二病でも入ってんじゃねーの?www」
ゼノは蓮がエレベーターに乗り込む時に
格好つけて言ったセリフに爆笑していた。
しかし、それでも足らないのか今度は
四つん這いになって床をバシバシと叩いて笑った。
「そんな事ないよ!」
蓮は口ではそう言っておきながら心の中で呟いた。
「(厨二病・・なのかな・・)」
チーンと軽やかな音を立てて
扉が開くと葵の姿があった。
「やぁ、待ってたよ
・・・・・彼は大丈夫なのかい?」
そう言って指さした方には
案の定、笑いすぎてフラフラになり、
それでも尚、笑っているゼノがいた。
その姿を見て蓮は、「これで大丈夫なのか」と
諦めにも似た感情を抱いたのだった。
「うん^^; あんまり大丈夫
じゃない(ガツン!)かも・・・・
・・・痛ってえ!!!」
蓮はもはや隠せないほど動揺し、
それを紛らわせようとゼノの頭を
グーで殴り、結果として右手を押さえて
ピョンピョン跳び回る羽目になった。
「さて始めようか。用意はいいかい?」
「いつでもいいよ!」
確認する葵に頷く蓮。
そこへ―
―テテーンテンテテーン♪
「合意とみて宜しいですねー!?」
どこから降ってきたのか
よくわからないBGMとともに
40階建てという高層ビルに
突然降り立ったこの男。
「レフェリーはこのわたし、
ミスターうるちが
務めさせていただきます!」
うるちは二人の間に立ち、
蓮と葵を交互に見ながら言った。
「あぁ・・今回はいいよ、うるち。
真剣ロボトルじゃないし
それにレフェリーが必要な試合でも
ないから他の試合を担当してくれ」
「え?ちょっとちょっと、
そんな勝手にぃ・・・」
登場早々出鼻をくじかれたうるちは
すねた口調で抗議した。
「いいからいいから」
葵は押しを強めて言う。
「・・・わかりました。
それでは頑張ってくださいねぇ!?
アディオス!!」
「・・・やっと行ったか
強く言わないと
きかないんだから、まったく・・・」
登場時間十数秒で去ったうるちに向かって
葵はやれやれといったように呟いた。
「前置きが長くなったね。
始めようか・・メダロット転送!」
緑の光に包まれ現れたのは
どっしりとした脚部、オチツカー
細身ながらも装甲の厚い、右腕リボルバー
右と対をなす左腕、サブマシンガン
そして特徴的な角、もとい
ミサイル発射口のある頭部、ミサイル
これらのパーツを身に付けた
KBT型メダロット<メタルビートル>は
旧式ながらもとある有名なメダロッターが
パートナーとして連れていたこともあるほど
優秀な性能を持つメダロットだ。
「頼んだよ メタビー」
「分かりました。マスター」
コンビを組んで戦闘慣れしているのか
葵は命令をせず、簡単に構えた。
「射撃タイプか。
こっちは格闘だから真っ向勝負で
丁度いいじゃない。
いくよ ゼノ」
仕入れたての知識を
活用しながらゼノを呼ぶ蓮。
「わかった!」
こちらも大して指示を出さずに構えた。
「それじゃ、ロボトルファイト!」
葵は声を張り上げ、開始の合図を告げた。
「いっけぇ!ゼノ!
機動で押して一気にきめろ!」
「了解!」
蓮は格闘タイプの売りであるスピードで
勝負しようと考えたのか指示をだした。
「そんなんじゃメタビーは捉えられないよ。
メタビー!リボルバー!」
その瞬間、刹那の速さで放たれた弾丸は
空気を裂き、ゼノに向かって飛んでいった。
「何!?ゼノ、回避だ!」
「無理ぃぃ!」
十分に勢いづいていたゼノは体を捻って
狙いをそらすのが精一杯だった。
カツーン!
乾いた音が響く。
右足を射抜かれ膝をつくゼノ。
「フフフ・・やってるロボよ」
「狙うなら今しかないロボ!」
「分かってるロボよ」
黒尽くめの男たちは
短く言葉を交わした後、行動を始めた。
「大丈夫か? ゼノ!」
蓮はゼノに駆けよるが、ゼノは大声で叫んだ。
「ふざけんな!
こんくらい平気だ!指示出せ!」
「・・・壁を伝って斬りかかれ!」
心を持ち直した蓮はそう指示した。
「意気込みはいいけどね、
そんな単調な動きじゃ―」
「―今だロボーーーーッ!!」
壁を伝って走るゼノに突然、
網がかけられた。
「うわっ!?何だこれ、ベタベタする!」
「!?」
蓮がいち早く反応して全力で駆けよったが
タッチの差で黒尽くめの男たちに
ゼノを奪われてしまった。
「あいつらは・・・!ロボロボ団!」
葵は男たちを知っているのか大声で言った。
「ロボロボ団!?」
蓮はその言葉に反応してから
ロボロボ団を鋭く睨んだ。
「こぉんな簡単にGETできるなんて
思わなかったロボ!
ラッキーだったロボ。
こいつは頂いて行くロボよ」
「チックショー! ここから出せーー!」
ゼノは、もがきながら叫んだ。
「フフフ 出せと言われて逃がすバカは
いないロボ!それじゃ、さよならロボ〜!」
ロボロボ団達はクルリと背を向けて走り出した。
そしてその先にいた飛行タイプの
メダロットに飛び乗って去ってしまった。
「こんの野郎、怪しいくせに正論いいやがって!」
蓮は負け惜しみを言いながら追いかけた。が、
メダロットのスピードに勝てるはずもない。
そして蓮は立ち止り、倒れこんで落ち込んだ。
「ゼノがさらわれた・・
変われるかもしれなかったのに・・
実験台にされたり、分解されるかもしれない
それに・・もう会えない・・・」
「諦めるのは早いよ」
落ち込みすぎる蓮に歯止めをかけたのは葵だった。
「どういうこと?」
「ゼノのメダルはうちで研究されている。
研究対象がいなくならないように
ゼノのパーツには極小の
電波装置が組み込まれている。
よって探知できるんだ」
葵は淡々と語っていったが話すにつれ、
蓮の表情が明るくなっていった。
「じゃあ、探せるんだね!?」
「あぁ 心配しなくていい。
僕とメタビーで連れ戻してくるよ」
「それじゃ駄目なんだ!
僕が行かないと意味が無いんだ!
僕が行かないと変われない気がするんだ。
頼む。連れて行ってくれ」
そう言って蓮は葵に語った。
「・・君は充分に変わったよ
この二日間で別人になったみたいだ
・・・行こうか!」
「うん! 行こう!」
後に語り継がれる二人の英雄が
このとき誕生していたのは
まだ誰も気づいていない。