メダロット・ゼノ

プロローグ

  

 

「暇だな・・・」
一人の少年が呟く。
その少年は空を眺めていた。
切れ長の目に、細く、高い身体つきが特徴だった。
しかし、ただ細いというわけではなく
しっかりとした均整のとれた身体だった。
「毎日こうして死んで行くのかな・・・」
再び口を開くと、つまらなそうな顔をした。
「蓮君は人が嫌いかい?」
ふいに声をかけられ起き上がると
そこには同じくらいの歳の子どもが立っていた。
「なんで僕の名前を知ってるんだ?」
『蓮』と呼ばれた少年は身構えた。
「名前だけじゃないよ。
 君の過去、性格、なんでも知ってる。」
「!!?」
蓮は不思議だった。
自分は会ったこともないのに
どうして向こうは知っているのか。
そして自分しか知らないはずの過去を
少年が知っているのかを・・・。
「自己紹介がまだだったね。僕は葵、瑞沙葵」
「みずさ、あおい?」
蓮は相手に敵対心が無いのを
確認したのか自己紹介をした。
「そっか。葵くんか。
 知ってるかもしれないけど僕は橘蓮て書いて、
 たちばなれん。でもどうして僕を知ってるの?」
「それは今は言えない・・・
 ところで君はメダロットを持っていないね。」
葵は蓮に問いかけた。
「ん・・・人と触れ合うのは好きじゃないから」
蓮は言葉を濁しながら答えた。
その言葉を聞いて葵は、
「それはいけないね。人が苦手なら
 なおさらロボトルをして克服しないと。」
そう言った。
「でもメダロットって何を基準に
 買えばいいのか分からないし・・・」
蓮は決して裕福な家で育ったわけではなかった。
その理由、そして蓮の悲劇は
メダロットによって始まったからである。
「やっぱり君の過去は君にとって辛いものかい?」
葵は問い、蓮の答えを待った。
数分後、蓮はゆっくりと口を開き、しっかりと答えた。
「起こってしまった事は変えられない。
 それに僕の悩みなんて、この広い世界から見たら
 ちっぽけなものでしかないからね。」
そう言って蓮は いたずらっぽく笑った。
「そうか、安心したよ。
 君が過去の事を怒っているんじゃないかとね。
 君になら、これをあげても問題なさそうだ。」
葵は話しながら自分の体を横へ移動させた。
そこから現れたのは見た事のない一体のメダロットだった。
全体は青みを帯びていて
どことなくクワガタを連想させた。
頭部に上向きの大きく尖った顎があり、
全体的に細く、尖ったフォルム。
何より特徴的なのは大きく外側に張り出した肩だった。
蓮が最初に思った事・・・それはただ一つだった。
「攻撃的」
蓮はその瞬間、自分の
思い出したくない過去を思い出していた。

逃げ惑う人々、悲鳴、炎、そして・・圧倒的な絶望。

「・・・」
「気に入ったかい?」
葵に声をかけられ
ハッと気がついた蓮の顔は蒼白だった。
「え・・あ、あぁ カッコイイ。」
蓮は確かにカッコイイと思っていた。
使いたいと思った。
蓮はふと考えた。

〜 自分は変われるかも知れない 〜

「そっか。良かった。もしよかったら
 このメダロット、ゼノ・ビートル、
 ゼノを使ってうちに来てくれないかい?」
葵はメダロットの紹介をし、蓮に訊いた。
「え・・・『うち』って?」
蓮は事態がうまく把握できず、返した。
「あぁ 言ってなかったね。
 『うち』っていうのは、メダロットを使った
 凶悪な犯罪組織を取り締まる機関、デルタの事さ。
 君に是非来てもらいたいんだ。」
それを聞いて蓮は驚きを隠せなかった。
「え!?デルタってセレクト隊と並ぶ有名な!?
 でもデルタは腕の立つメダロッターしか採用しないと
 聞いてるし、僕はロボトル歴0だし・・・」
蓮は恐れ多いと言うように恐縮した。
「大丈夫さ。君なら出来る。
 僕にはね、人を見る目があるんだ。」
そう言い、葵は自分の目を指差した。
「どうだい?来ないかい?」

「僕は・・・自分を変えたい!」

それは蓮が
はっきりと自分の意見を言った日だった。


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